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第1章 本当に、愛している

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第1章 本当に、愛している

「君は、本心から冴子のことを愛してくれているのかね」
「はい」

大輔は、冴子の父親、権三の顔にまっすぐな視線をぶつけて断言した。

「そうか…」

権三はそう言うと立ち上がり、大輔に背を向けた。そして六法全書の書棚を見つめて言った。

「なら、冴子を…手放せ。別れてくれ」

大輔の顔から血の気が引いていく。

「冴子はまだ23だ。若いから、血迷っているのだろう。冴子にはすでにワシが見込んだ素晴らしい男をあてがう算段ができている。失礼を承知で言うが、冴子の人生という素晴らしいステージに、キミのような四流ミュージシャンの入り込む余地はないのだよ」

大輔は苦虫を噛んだような顔でうなだれた。しかし、権三の言うことにも一理あるのだ。大輔は音楽活動をはじめて5年だが、全く売れる気配はない。アルバイトでなんとか食いつないでいるが、デート代も冴子が9割持つようなていたらくである客観的事実が存在していた。

「しかし26歳にもなってこんなふらふらした生活とは…せっかくいい大学の法学部を出たのに。道を誤ったな。ワシの結論は変わらぬ。帰ってくれ」

そう言われた大輔は言い返す言葉もなく、スゴスゴと権三の書斎をあとにした。

「あんな若造に、わしの目論見を蹴散らされてたまるか」

権三は吐き捨てた。

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第1章 本当に、愛している

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