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第1章

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第1章

 雨の強い日だった。
 八月。空が憂鬱である。道行く会社員は悲鳴を上げ、主婦層は半額チャンスを狙って夫に車を出させる。
 俺はマンションに部屋を借りていたが、ベランダで栽培をするのが趣味で、そのせいで雨の日に土が排水溝をつまらせ、めんどうなことになった。てっきり、管理人に言えばやってくれると思ったら、費用は自己負担――いや、自分が甘えていたのか。ネットで調べても答えは得られず、今は雨の日は鉢植えを中に入れている。昔は野菜も育てていたが、今は小さなハーブを育てる程度だ。
 翌日、雨があがり晴れ晴れとした青が広がる。爽快な朝。俺は窓を開けてベランダに出るが――おかしなものを発見した。
「ん?」
 泥がベランダについていた。
 いや、泥が何で、鉢植えはすべて中に入れたのに。ここは四階で泥が降ってくるなんてないだろうに、いや一階でもないだろうけど、しかも、その泥がまたおかしな形だった。
「あしあと?」
 人の足のような形をしていた。
 靴をはかず、成人男性の足のよう。土踏まずのとこはちゃんと泥がつかず、足の指やかかとなどが、くっきりと泥で姿を表す。左足と右足、ちゃんと人一人分ある。
「い、いやいや――何で、え、人?」
 思わずスマホで撮り、ツイッターに上げるが、嘘だ、そんな目立ちたいのかと言われ、スマホをベッドに投げ捨てた。
「くそっ、なんなんだよ」
 気のせいだ、気のせい。そう俺は心にふんぎりをつけて、足跡のような泥をブラシで落とし、仕事だってあるんだと、支度をして出勤した。
 家に帰ると、足跡なんてやっぱりない。これがホラーなら、足跡が部屋の中に侵入していたりする。新たな足跡が。
「ま、現実にそんなことがあるわけないか」
 ふと、俺は天井を見上げた。そこに足跡があった。
 ベランダにあったのと同じく、成人男性ぐらいの大きさで、ちゃんと左と右ある。何故か天井にあった。
「……っ」
 雨漏りかなんかか?
 一瞬驚いたものの、すぐに落ち着く。今の時代で怖いのは近代兵器や疲弊した人の精神などであり、こんな非科学的なのはどうでもいいものだ。馬鹿馬鹿しい。俺はテーブルを台にして、またブラシで天井の汚れをとった。
 翌日、今度は俺のベッドの上に足跡があった。
「何なんだよ」
 それは、茶色から赤色に変わっている。俺のお腹の部分を、掛け布団を、踏んでいたかのように足跡があった。

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