/ 60ページ

余熱

(1/2ページ)

余熱

「ハァハァ……」

 呼吸を乱しながら、彼は円柱状の空間を疾走する。
 乱れる呼吸は、足を鈍らし思考を奪う。それでも、止まりそうになる足を前へと押し進める。宙を飛び交う小石が彼のほほに赤い筋を引くが、それに気づく余裕すらなかった。

 背後から岩が迫るのを肌で感じる。彼は迷うことなく振り返り、虚空から拳銃を顕現させ発砲する。発射された銃弾は赤々と輝いており、岩に着弾した瞬間、爆散した。

 彼は岩が爆散するのを一目もくれずに、踵を返して駆け出した。新たな弾倉を取り出そうとするが、そんな暇は与えられなかった。

 後方から放たれる巨大な拳が唸りをあげ、地面に叩きつけられる。地面に亀裂が走り、轟音と風圧で土煙が舞う。

 彼は、呼吸を整え、地面を踏みしめ、状況を振り返る。
 視界に渦巻く砂煙は周囲を隠し、索敵を許さない。
 恐怖で乾いた下唇を噛みちぎり、震える膝を、鉄拳で制裁する。

 土煙は、波の引き際のように徐々に引いてゆく。土煙が薄く残る中、彼は決断を下す。

 今もっとも必要な事がある。
 それは誰一人、犠牲を出さないこと。

 疲労で上がらない腕を酷使。思い描いた銃器のイメージが、意図した通りに具現化する。

 --思い描け。自分が何かを望むなら。

 --思い出せ。救うための、銃器を。

 一瞬、少女達と過ごしてきた日常が脳裏を過ぎった。少女達と喜怒哀楽を共に、分かち合い過ごしてきた日々。最も近くに居て、最も信頼できる存在。そんな彼女達を裏切り、見捨てる事などできない。

 悪い足場で精一杯踏み切り、重力を振り切って高く跳ぶ。酷使し、疲弊した体は容赦なく悲鳴を上げるが、これを逃せばチャンスは無い。

 自分が選び、望んだのだから。
 救ってくれた仲間達を、殺させはしないと。

 --終わりにしよう。必要な『銃器』は、
 もう、知っている。

/ 60ページ

余熱

(2/2ページ)

みんなが送ったスター数

525

この作品にスターを送ろう!

明日のスターも待ってます!
(1作品につき1日1回 押せます)

新着ピックアップ

急上昇ランキング|ファンタジー