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始まりの日

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始まりの日

 
 高校の卒業式が終わって、大学入学を間近に控えた18歳の春。
 新しい生活がスタートした日のことは、今でも鮮明に覚えている。
 
 その日早朝に目が覚めた私はすぐに起き上がって布団をたたみ、仏壇の前に正座して、りんを鳴らした。
「おじいちゃん、おはよう。今日からお世話になります」
 額縁におさまるおじいちゃんは、穏やかにほほ笑んでいた。



 おばあちゃんはすでに台所に立ち、せっせと朝ご飯を作っていた。
「おばあちゃん、おはよう」
 声をかけるとこちらを振り返り、少し驚いているような表情を見せた。
「あら、おはよう。早いね。ゆっくりしてていいのに」
「しっかり眠れたから、大丈夫」
「そう。それはよかった」
 そう言っておばあちゃんはほほ笑んだ。
 おばあちゃんの笑った顔は優しく、慈しみにあふれている。私はなんとなく、昔から思っていたことを口にした。
「おばあちゃんの笑った顔って、ちょっと仏様みたいだよね」
「……何言ってるの(しおり)ちゃん、そんなたいそうな」
 おばあちゃんはまた笑う。たしかに突拍子もないことを口にしたな、と自分でも思った。
「もうすぐ朝ご飯できるからね。栞ちゃん、顔洗っておいで」





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