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独りよがりなミラクル慕情

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独りよがりなミラクル慕情

 道路の両脇に高層マンションが連なるこの辺りは、地下鉄の階段から地上に出ても、まだ地下に居るような気がする。
 
 すし詰めのマンション群が、巨大な蟻塚のように林立していて、そこで暮らす私たち住民は、まるで地を這う虫のよう。
 
 都市の再開発で、首都圏ではこういった地域が増えている傾向があるとはいえ、まだまだ特殊な一帯だ。
 
 なにしろ、六畳一間の狭いボロアパートに住んでいるタカトシにでさえこう言われた。
 
 「見える全てが新し過ぎて、この人工的な閉塞感に息が詰まるよ。人間味もないし、時には圧迫感さえ感じることもある」
 
 悪気がないのは分かるけど、そんな言い方ってない。正直私自身も、良く言えはアーバン、悪く言えば、冷たく硬質な雰囲気だとは思う。
 でも私は、30歳になった事を期に、この地域のマンションを購入した。銀行に35年のローンを組んだのだ。
 なぜいきなりそんな事をしたのかは、自分でもよく分からなかった。もしかすると、10年交際しても、未来の見えないタカトシとの関係に、ピリオドを打つ意味が含まれていたのかもしれない。
 否、彼にそう捉えられる覚悟があったと言うべきか……。
  
    

 タカトシとの出会いは、大学の時まで(さかのぼ)る。
 2つ先輩で、サークルが一緒だった彼はとても光っていた。知的で背も高く、明るいサラサラヘヤーがとても爽やかだった。
 サークル内では、抜きん出て目立つ存在だった。
 彼がサークル長になった年、私は不意に呼び出されて告白された。
 それはシャイな彼にとって、よほどの勇気がいったろうし、何よりその姿が素敵だった。その真摯な目に、心を揺さぶられたのも事実だ。
 でも本当のところ、『好き』の度合いは、私の方が大きかったかもしれない。
 誰にも言ってはないが、それとなく近づいて、積極的にアプローチをし続けたのは私の方だった。
 なのに、女仲間に羨ましがられ、私を取られたと悔しがる男子を目の当たりにすることで、自分に妙なプライドが生まれてしまった。ある意味、いい気になっていたんだと思う。その邪魔なプライドが、タカトシに対して、素直になる事を許さなかった。
 それから交際が始まって、もう10年にもなるが、そのスタンスは変わってない。
 彼の方から告白したんだから、デートに誘ってくれて当然、美味しい所に連れて行ってくれて当然、プレゼントを貰って当然といった具合に。
    

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