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寒梅高校対面式

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寒梅高校対面式

1979年4月9日。僕、近衛信介にとって今日は特別な日だ。


朝8時3分。僕は梅の校章の入った制帽を深くかぶり、県立第一高校の校門へと足を踏み入れた。

県立第一高校は通称「寒梅高校」と呼ばれる創立90年の伝統ある男子校だ。県内ナンバーワンの進学校であり、東大・京大・阪大・東北大など旧帝国大学に毎年100名近くの卒業生を送り出している。医師、弁護士、作家、政治家、大学教授、会社役員などが卒業生一覧にはズラリと名を揃えている。

「寒梅高校」と呼ばれる所以(ゆえん)ともなっている校章の梅には、「寒く辛い冬にも咲き誇り、人々に親しまれる果実を実らすような強く、世のため人のためになる人々を送り出したい」という願いが込められている。

6日の金曜日に新入生のみで執り行われる入学式を終え、今日開催されるのは上級生1000人との対面式。そして僕には特別な仕事が与えられている。



「君にお願いしたいことがある」
僕のもとへ教頭先生から電話がかかってきたのはちょうど1週間前。アリスの「チャンピオン」のレコードを聴いている最中だった。

「君に、対面式の壇上に立って、入学生代表あいさつをしてほしいんだ。入学試験の成績2位の生徒に入学式で挨拶をしてもらい、1位の生徒に対面式で挨拶してもらう。そして次の日から1週間、新入生全員に応援歌講習会を受けてもらう。これが伝統なんだよ」
「それって、つまり……」
「そういうことだよ。君が学年トップだ」
「わかりました!やらせて頂きます」
「頼むよ。……色々大変だと思うけどな」
教頭先生はそう言い残して電話を切った。

学年トップ。僕の脳内でその言葉だけがリフレインする。僕は県内のトップの座をもぎ取ったんだ!その嬉しさがじわじわとこみ上げてきた。

「よし、やるぞ!」

僕はそう言うと、机の上に原稿用紙を広げ、あいさつ文を書き始めた。


僕は鞄の中に原稿が入っていることを確かめる。原稿用紙6枚分。15年間生きてきてここまで魂を込めて文章を書いたのは初めてだ。

僕は深呼吸をすると、校舎の中に足を踏み入れた。特別な日の始まりである。

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