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雪夜の訪問者

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雪夜の訪問者

 雪の降る夜、少女は一人きりで留守番をしていた。

 今日も父は遅くまで仕事だった。

 頼まれた家事を終わらせ、食事を済ませた少女は、リビングのテーブルに両肘(りょうひじ)をついて(すわ)り、窓の外を(なが)めていた。

 

 キンコーン、と玄関(げんかん)のチャイムが鳴る。

 少女は立ち上がって、ふと、壁の時計を見やると、いつもより一時間ほど早い時刻(じこく)を示していた。

 今日は早く終わったんだ。自然と、少女の口元がほころぶ。

 少女が玄関灯(げんかんとう)のスイッチを入れると、(とびら)()りガラスの窓越(まどご)しに、ぼうっと黒い(かげ)が浮かび上がった。

 そこで少女の手は止まり、首を(かし)げた。
 
 父はこんなに背が高かっただろうか。

 その影は、異様(いよう)に大きかった。

 きっと父ではない。少女は直感的にそう思った。

 それに、(かげ)の形になにか違和感(いわかん)がある。

 少女は、()りガラスに浮かんだそれを見つめ、様子を(うかが)った。


 キンコーン、とまたチャイムが鳴る。(かげ)微動(びどう)だにしていない。

 少女は怖くなり、静かに二、三歩後ずさると息を止めた。知らない人が来たときは、扉を開けてはいけないと教わっている。

 「こんばんは、お嬢さん。」
 突然(かげ)が喋った。壊れたおもちゃのラッパを吹いたような、なんともひょうきんな声だった。

 少女はびくりと肩を揺らしたが、息を一つ吐いてから、謎の訪問者に答える。
 「ど、どなたですか?」

 「はじめまして、驚かせてしまったなら失礼。(わたくし)、こういうものです。」
 フガフガと(かげ)が話すと、扉と床の隙間(すきま)から一枚の紙を差し入れた。
 少女が紙を拾い上げると、(かげ)はどこから取り出したのか、頭にシルクハットを()せる。

 「これってチラシ?ネーヴェ移動サーカス団…あなた、ここの団長さん?」

 「はい、いかにも。三日ほど前からこの街に滞在(たいざい)しております。」そう言って影は、()りガラスの向こうで丁寧(ていねい)にお辞儀をした。

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