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「できた......」
 時刻は午前3時。雑貨屋で一目惚れした目覚まし時計がコチコチと部屋に響くなか、春野さくらは溢れるような声で呟いた。
 趣味である絵本作りを、今朝おきてすぐに始めた。顔も洗わず、髪も寝癖が付いたまま。まるで何かに取り憑かれるように、朝ごはんも食べず、昼ごはんも食べず、夕飯は姉が作ったおにぎり一個だけ食べ、絵本作りに没頭した。
「... ...久々に一日中パジャマ人間」
 自身の姿が朝起きたときと変わっていないことに、さくらは苦笑いする。
 そういえば、姉がせめて着替えろと言っていたような気がする。
 さくらは完成した絵本を最初から読み返す。
 表紙にはキレイなお姫様のイラストが描かれている。さくらの歴代最高で会心の出来だ。
 ストーリーは、ある国のお姫様と平民の女の子がヒョンなことから親友になり、楽しく遊び、喧嘩し、そして一緒に悪の大魔王を倒し世界を平和にするお話。
 平民の女の子のモデルはさくら自身。すこし可愛くかきすぎて最早別人になってしまった。
 そして、お姫様のモデルが、昨日さくらが見た夢にでてきたお姫様である。
 とてもリアルな夢だった。
    

 目を覚ましたとき、おきたこの世界が夢じゃないのかと思ったくらいだ。
 リアルの夢だったからこそ、出てきたお姫様がとても綺麗で、笑顔が素敵、そして何より特徴的だったのが、背中まであるシルクのような黒い髪。その黒い髪が太陽の光などで反射すると、ピンク色に輝くのだ。
 髪が反射したときに風になびく髪は、まるで桜吹雪のようだった。
「名前……聞いておけばよかったなぁ」
 夢の中とはいえ、あれだけ仲良く遊んで、最後には大魔王も倒しておいて、名前を聞いていないなんて。
 さくらは絵本の登場人物に名前をつけるのが苦手であった。毎回登場人物の名前をつけるのに苦労する。今回は特にだ。まったくイメージが降りてこない。
「そういえば、私も名乗ってない……」
 夢だからだろうか。
 だが、名前はつけられなかったが、それはそれでいい。
 ストーリーに違和感はないし、お姫様は呼び名は『姫様』で問題ない。
 これで完成だ。
「んーっぱぁー」
 さくらは身体を大きく伸ばす。その際に上半身の至る所からポキポキとなる。
 眠気はもちろん、空腹までも一気に押し寄せてくる。
「……ラーメン」
 この時間に食べるラーメンは最高に美味しい。ミシュランの3つ星レストランをも超える存在と言っても過言ではない。
    

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