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最高な僕《ばか》

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最高な(ばか)

 桜桜、今咲き誇る――今年もまたこの季節がやって来た。


 大学を卒業してから上京した僕には五回目の春。散った桜の花びらで埋め尽くされた道を相棒(チャリ)に跨り颯爽と走り抜ける。その様は、まるでレッドカーペットを練り歩くハリウッドスターのように。
 色が違うトコロが正に僕専用絨毯って感じだぜ。違ったカーペットだ。そういや絨毯とカーペットの違いって何だと思う? 答えはぐぐれば出て来るぜ。


 そんな僕専用のマットレスルートを抜けると、見慣れた駅が見えてくる。いつも仕事に向かう時に使っている駅だからな、見慣れていて当然だし、なんだったら駅員さんだって、毎朝同じ時間に乗っていく頭が寂しいおっちゃんとだって仲良しだぜ。という事でハロー駅長! 今日も良い天気だねぃ!


「……え? あ、はい」


 ふふっ。そんなに畏まらなくたって良いではないか。僕と君の仲だろう? そう言えば駅の裏手に出来たおニューなカフェには行ってみたカイ? あそこで飲めるブラックCoffee(角砂糖五個入り)が中々美味でね、今度一緒にブレイクタイムと洒落込もうじゃないなぁぁぁい! さっきまでそこにいた駅長がいなぁぁぁい! おいおい駅長さんよ、親友との別れだってのに随分とあっさりいなくなってくれるじゃあないか。
 で・も! そんな駅長もどうせ後から僕に会いたくて会いたくて震える時間が、来るんだろうぜっぜっ。


「間もなく二番線に電車が参ります。黄色い線の内側に――」


 おおっと、もうそんな時間だったのかい。悲しいかなこの地ともしばしの別れだ。……元気に暮らせよ……みんな。
 そう思った僕の頬には一筋の涙が零れる。後ろから僕を応援してくれる仲間の声が聞こえる。――バカヤロウ……ッ! そんな涙ぐんだ声で応援されても――笑えねぇよ。僕のそんな思いを知ってか知らずか、涙を堪えて必死に、最初よりもドデカイ声援を投げ掛けてくれるみんな。そんな声援を受けた手前……泣き顔で別れなんて、できる訳ないよな。


 必死に涙を堪えて、どうにか笑顔を作り出す。恐らく上手くは笑えてないんだろうな。多分僕の人生の中で一番汚い笑顔だろう。でも……俺の人生の中で一番、最高の笑顔だった筈だ。――行って来るぜ! みんなッ!!


 そうして振り向いた先では、ベンチに腰掛けた淑女(おばあちゃま)がふたりで茶しばいてた。そりゃそうだよ、一人で来たんだもん。あちゃあ。

 

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