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隣席の君

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隣席の君

――ねぇあなた。眠りほど不思議な状態ってないと思わない?
完全に意識がないのに息だけしていて、意識が戻る保障なんてないのに、ヒトはそれを眠りと名づけて毎日意識を手放すのよ。死んでいるのに限りなく近い状態なのに、意図も、簡単に。
なんだか私、怖いわぁ……


そう言って隣の席に座る坂上緋色(さかがみひいろ)は、突然親しくもない僕に話しかけてきた。

高校2年の春。
それに気がついたのはクラス替えをして割りと直ぐの頃の事だった。

坂上緋色(さかがみひいろ)はとにかくよく眠る。
 貴方の教室にも、一人は居なかっただろうか。いつ何時見ても授業中に眠っているクラスメイトが。
 僕の場合、そのクラスメイトは坂上緋色と言う名の少女だった。

坂上さんは、授業中でもお構いなしに机の上に突っ伏して、その白魚のように華奢で白く透明な手の甲に薔薇色のぷっくりとした頬を乗せ、すやすやと心地の良い寝息を立てて眠る。
 起きている時の彼女は、先の方だけカールの掛かった艶やかな黒髪をして、名前の通り緋く、強い光を漆黒の瞳に秘めた美少女だった。何を考えているかわからない無表情なのに、美しさでそのへんの女子には興味がない僕ですら吸い込まれそうになる。
 眠る姿ももちろん美しく、漆黒の睫毛が影を落とす頬骨、そこから続く輪郭線は彫像のように光々しい。セーラー服の襟に波打つ柔らかな輪郭線と、顔に零れかかる絹糸の様な髪が彼女の美をより完璧なものにしていた。

まるで女神だ。ずっと見て居たい……。

そう思いながら彼女の顔を見ていると、

「おい、起きろ」

と、突然雷のような声が頭上から隣の彼女に向けて、降ってきた。

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