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1,とどのつまり非日常

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1,とどのつまり非日常

 鐘の音が聴こえる。
 今日が、終わる。今日が――始まる。

 ***

「あれ、南雲今日も帰るのか?」
「わるい、用事があってさ」
 ホームルームの挨拶は、俺にとって終わりではなく始まりで。
 前の学校から使い回しのスクール鞄へ無造作に筆記用具を詰め込めば、鞄とは対照的にようやく履きなれてきたピカピカの学校指定スリッパで、ワックス掛けされた廊下を勢い良く蹴り上げる。
「南雲ってさ、いつも帰り早いよな」
「親御さんが共働きって言ってたし、家の事で忙しいんじゃないか」
「いや、案外前の学校に彼女がいて毎日電話でもしてるんだろ」
 全部聞こえてるぞ、馬鹿。
 どれもこれもハズレの憶測に、心の中で舌打ち一つ。お前らはこれで帰るだけかもしれないけれど、こっちはそんな呑気な状況じゃないんだ――
「やばい、間に合わない……!」
 靴を履き替える時間も惜しくて、そのまま手に持って走りながら外でローファーに足を突っ込む。足についたグラウンドの砂が入って不快感しかないけれど、今はそんな事言っている時間がない。ごめんローファー、あとでちゃんと砂出してやるから。
    

「南雲くんってピアスしてるし白髪で黒メッシュだから最初は怖かったけど、なんかかっこいいよね」
「メッシュと言うよりはプリンだけどね」
「私同じクラスだけど、地毛申請してるの見た。なんでもお父さんの血筋が全員白なんだって」
「さすが都会っ子、って感じ。ハーフかな」
 だから聞こえてるぞ、馬鹿!
 いや、けれどもこれに関しては聞いていけなかった気がしてきた。学校前の道、俺よりも少し前を歩く女子達から聞こえる会話に若干の申し訳なさを感じながら、俺は右向け右をして細い路地裏へと入る。綺麗とはお世辞にも言えない道だから嫌だったけど、ちょうどいいから近道だ。
 人通りがほとんどない道を全力で駆け抜け、壊れかけのフェンスを大股でひとっ飛び。そこから更に山へ入り舗装されていないでこぼこ道を走り抜ければ、すぐに目的地の古びた建物が目の前に現れる。
「……あ、やば」
 忘れるところだった。
 使い慣れたスクール鞄から狐のお面を取り出せば、お祭りの時みたく横の方にズラして付ける。うん、完璧。
 時計を見れば時間は、午後四時五分前。
「今日は、遅刻じゃない」
    

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