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プロローグ

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プロローグ


 その日は、寒い夜だった。外は日が落ち、雪は舞って……まるで花びらのようにふわふわ地面に落ちては消えている。

「……」

 そんな中、ろうそくが点いているだけの部屋で立ち尽くしている人がいた。
 目の前には、白い布が被せられたベッドがある。その人は布をめくることもなく、ただただ見つめていた。

「申し訳ございません。最善は尽くしましたが……」

 そう言って医者は遺体の前で立ち尽くしているその人に頭を下げた。
 
 ――ここは『霊安室』だ。

  医者としても、出来る限りの事はした。しかし、その技量と努力を持ってしても『救えない命』というのはやはり存在してしまう。

 ベッドに横たわっている『彼女』も……その一人だ。

「……ありがとうございました。娘のためにここまでしてくださって」
「いえ……」

 まさかお礼を言われるとは思っていなかったからなのか、医者は少し面食らった様な表情になっていたのだが、その人は……そんな医者を見て少し笑っている。

 でも、その目は赤く腫れていた。

「……それでは」
「はい。ありがとう……ございました」

 そう言って、扉を閉めて去っていく医者に向かって深く、一礼したのだった。

◆   ◆   ◆   ◆   ◆

「可哀想に……」
「亡くなったの高校生らしいな」

「まだ十七歳でしょ? 若いわねぇ」

「それにしても……」
「ええ、本当にどこで嗅ぎ付けて来たのかしらね」


 会場に入っていた参列者の人たちも、さすがに周辺を囲むように来ている『彼ら』の存在はやけに目に入る。
 外は雪が降っているにも関わらず、『彼ら』は自身で用意したと思われる傘やカッパを使ってわざわざ外に待機している様だ。

「…………」

 彼らの存在は会場にいれば否応なしに目に入るほど、多かった。本当は、通夜と告別式は身内だけで行うつもりだった。

「すみません。表の方は、マスコミ関係の方たちでいっぱいなので、どうぞ裏の方から……」
 それなのに、どこでこのことを嗅ぎ付けたのか、会場の外周りには報道関係者でごったがえしていたのである。

「……はい。分かりました」
 葬儀屋の方からそう伝えられ、会場にいた人たちと、喪主のその人はわざわざ別の出入り口を使わざる終えなくなった。

「自分の娘が亡くなったのに可哀想ねぇ」
 移動している最中、そんな喪主の人を哀れむような声がところどろこから聞こえている。確かに、他の人からしてみればそれが『普通』の反応なのだろうか。

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