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第001話 廃棄命令

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第001話 廃棄命令

「君は、粗大ごみなんだよね」
 眼前の男が壁に向かいながら言った。
 感情のない、棒読みセリフだった。

 粗大ごみ? 俺がか――。

 いや、そんなわけはない。

 俺は、営業用アンドロイドとして数々の企業に派遣され、忠実に任務を遂行し、結果を確実に残してきたはずだ。
 それぞれの契約に対し、商談成功率100%という完全さが俺の誇りだった。

 ミスは一度も犯していない……。

 まさか、新型が開発されたのか?

 そのような情報はインプットされていないはずだ。

 では、何故ゆえに……。

「わかったね。直ちに、HA101廃棄倉庫に行き、指示を仰ぎたまえ」
 その男はこちらを見るでもなく、業務的に言葉を伝えた。

 何なんだこいつは?

 感情パラメーターはゼロに近い数値だし、心拍数だってゆっくりで、ほとんど動いてないんじゃないか。

 脳波は――。

 ゲッ! 平坦脳波(へいたんのうは)だ。

 脳死状態の脳波じゃないかっ!

 こいつ生きてるのか?

「どうしてなんですか? 私は与えられた仕事は完璧にやってきたはずですが――」
 勇気を出して、平坦脳波に言い返した。
「それだよ。その自分を返りみない傲慢な態度。自分が絶対正しいと一歩も引かない姿勢。――アンドロイドの第一理念は?」
「人間には絶対服従です」
 俺は即座に答えた。
「そう、それなのにお前はいつも反論してくるらしいね。機械の分際で――」
「しかしですね。私は、営業用パートⅢです。商談の駆け引きには、一歩も引かないのが基本です。そうプログラムされています」
「ふん。よくもまあ、人間くさくなったもんだね。最初は『はい』しかいえなかったのにね」
 棒読みのようなセリフだった。
「そりゃ、経験値も増えれば、会話も巧みになりますよ」
「もういい。お前はどうせ廃棄処分だ。早くごみ捨て場へ行くんだ。命令だよ」
 その男は結局、一度も振り向くこともなく、淡々と壁と話してるように見えた。

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