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天才プロボクサーの引退

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天才プロボクサーの引退

オレのオヤジはプロボクサーだ。
相手のパンチをまったく喰らわず紙一重にかわす。
試合が終わってもいつも綺麗な顔のままだ。
相手のパンチはいつも空を切るから、人々はオヤジを
「ゴースト(幽霊)」と呼ぶ。

だけどオヤジは変人ボクサーだ。
最終ラウンドまでパンチを一発も撃たないのだ。
相手が大振りしてガードがガラ空きになっても
何故か撃たない。口をモゴモゴさせながら笑ってる。
「おい、なんでチャンスで撃たないんだよ!」
ファンにやじられてもオヤジはニヤニヤしている。
そんな感じだから、試合は引き分けが多い。
相手が打ち合おうとしてもパッパッとステップで
後ろに下がって決して打ち合う事は無い。
「きっとアイツは顎が弱いんだ。一発浴びただけで
KOされるから逃げ回っているチキン野郎なのさ」
そう分析するマニアなファンもいるけど、本当の所は
誰も判らない。

もう一つ不思議な事があった。試合になるといつも
母さんがセコンドの中にいるのだ。
決まって5ラウンドが過ぎると姿を消して、
6ラウンドが終わる前に戻って来る。
オレはいつも観客席で応援しながら「?」と
首を捻っていた。

そんなオヤジがある日
「おい、お前達。今日でボクサーは引退だ」
突然言った。
「あら、そう。じゃあ物件見つかったんだ」
「ああ。武蔵小杉に丁度良いのがあったから
 もう仮契約も済ませたよ」
母さんは特に驚く様子も無い。きっと以前から
オヤジが引退するつもりだと知っていたのだろう。
だけど物件って……なに?

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