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水たまり

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水たまり

 水たまりには英語で2種類の訳し方があるらしい。PoolとPuddleだ。Poolとは自然に出来た比較的きれいなもの。Puddleとはどちらかというと汚い、泥を連想させるものと考えてくれれば結構。今回はPoolの方の水たまりを想像してほしい。
 とにかく私の前に水たまりがあった。それも大きな水たまりだ。コンクリートにいびつな形でそこにあった。子供たちが来れば、喜んでその上で跳ねるかもしれない。子供たちが周りにいなかったわけではない。周りには見えない、私にしか見えない水たまりが、とうとう来てしまった。右にずれると、水たまりも右にずれる。元いた場所に戻ると、水たまりも元いた場所に戻る。目をこすってよく見るが、確かに水たまりだ。水たまりよりも上にあるものを、鏡のように写している。私を見ている周りの人たちに目を向けると、彼らはすぐに別の方向に目を反らしていた。見えていなくとも気付いているのだろう。もうすぐで私は30歳になる。妻も娘も、家で私の帰りを待っていることだろう。しかし水たまりからは逃げられない。一息
吐くと、携帯を出して家に電話をかけた。妻が出た。
「おれだ。今目の前に、水たまりが来たよ。」
少しの間を置いてから、「そうですか」と、涙ぐんだ声が聞こえてきた。
「絶対に帰るから。綾のことよろしく頼む。」「はい。」
数秒空けて、ゆっくりと切った。携帯をしまうと、再び水たまりを見た。一回大きく深呼吸する。頷くと、水たまりに向かってジャンプした。私の足が水たまりに触れた瞬間、透明だった水たまりがカラフルに変色し始めた。ゆっくりと吸い込まれるようにして、中に入っていく。とうとう私の体は水たまりの中に入り切った。
 カラフルな空間を抜けていく。目がチカチカし始めた頃、前から光が近づいてきた。

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