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はじまり、はじまり。

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はじまり、はじまり。


「おはよ。」

いつもの顔が、机の向こうから少し高い声をかけてくる。


「ああ。」


いつものように無愛想に、返す。

「ねえ、昨日からの新しいドラマ見たあ?主役あんま役はまってないよねー。配役さ~あたしとしてはさあ…」

俺の前の席に生徒がまだ登校してきていないのをいいことに、エイリはそこにストンと腰かけて、またいつものようにペラペラとお喋りを始めた。

「だってさあ…そう思わない?でね…」

「ふうん…」

参考書を読みながら、適当な相づちで話を聞く。…ふりをする。

「ねえー。聞いてるの?壱!」

聞いてない。

「ああ。」

「じゃあーあたし今最近気になる俳優誰って言~ったっ!?」

「お前なあ…」

エイリは体だけ横に、しかし顔は真っ直ぐに壱を見て、独特に口元をクィと上げて微笑んだ。

「んん?」

壱はふーとため息をついてから、やっとチラリとだけエイリに目をやった。
そしてすぐに参考書の一ページに戻す。

「俺なんかと話そうとして、楽しいのか?」
またエイリはフフ、と笑った。

「んーん。ぜーんぜん。」

すっと立ち上がり、その席の生徒がちょうど来たので、エイリは席を空けた。自分の席へ足を向ける。

「うっそ~」

顔だけ壱を振り返って、彼女は教室の一番右前の席へ歩いて行った。

「(ッたく……)」

朝の学校。ざわつく教室内。エイリの声だけ少し耳に残る。


また今日も退屈な一日が始まる。
遅刻してくる奴がいる。たぶん。
また先公が頭ごなしにキレる。
1限のアタマ10分…5分でも潰れればいいな。

ああ、嫌だ。

2限はきっとまた進路だの偏差値だの言われるんだ。
高校も3年になるとこうも景色が変わるもんか―

いつもと変わらぬ、切迫と無気力の入り混ざる日常が、また始まる。


初夏―

先公達は一層口うるさく俺達に干渉するようになった。
何を言ったってヤル気の無い奴にはムダなのに。それが判らないんだろうか。


「おい、安原」

なんだよ。

「はい」

「外ばっか見てないで黒板見ろ黒板~当てるぞー。」

「先生~!きっと安原君は2組の女子の水泳を見てたんだと思いま~す!」

「え!うっそ、2組1限水泳!?」

「早く言えよ安原~!独り占めはズリィだろ!」

「ほらー!お前らー!騒いでないで席つけー!当てるぞー!」


全く、面白い奴らだ。こいつら。

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はじまり、はじまり。

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