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‐できれば僕は平穏な生活を過ごしたいのに‐

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‐できれば僕は平穏な生活を過ごしたいのに‐

 変な生き物(アレを生き物と言うのは少々無理はあるが)を拾ったのは、確か紅葉が落ち始めてから一週間くらい経った時だった。

 朝の5時過ぎ。夢の足跡すら残せずに、パチリと目が覚めた。先月、このアパートへ引っ越してきた若い女の人が隣の部屋に住んでいるが、毎朝、聞きたくもない声を聞かされているためにこの時間に起床するのがすっかり習慣になっている。

 今日も今日とて、キャアだとかイヤだとか言う生々しく艶やかな声が薄い壁越しに聞こえて、僕の股の間にある男としての器官がツキツキと痛いくらいに疼いているけど、今は寒くてそんなものに構っている場合ではなかった。

 暖房を点けないで寝たせいか、鼻の奥がちょっとだけムズムズする。ともすればクシャミが出そうになるが、ハックションなんて音が聞こえたら隣室の熱く盛り上がった興も醒めてしまうだろうと、なんとか我慢する。

 逆に息を吐けば高確立でクシャミが止められるのだけど、そうして吐いた息が白くなるのはどうしてだろう。

 のっそりとベッドから起き上がり、うあ寒いうぅ寒いとそれだけを呟きながらストーブのスイッチをオンに。

 温風が出てくるまでの約七分。これが実にさむいのである。

 触ってみても未だ冷たい金属の箱を目の前に、膝を抱いて縮こまると、チッチッと聞こえるそれに着いてる液晶画面には、二桁目の数字は無い。一桁の数字は、僕の目が節穴でないのなら、6と表示されていた。

「ろく、ど……。」

 面白半分にドクロを逆から言ってみた訳では決して無い。じゃあ何が『ろくど』なのかと言えば、現在の部屋の気温、がそれに当てはまる。

「うし、コンビニ行こ。」

 股間の熱もようやく冷めてきて、いつまで経っても暖かくなる兆しすら見せない箱から離れて、クローゼットからパーカーを手に取りキッチンへ向かう。

 シンクの中が荒み切った有様なそこをいつかは掃除しようと思いこそすれ、結局はやっておらず、いつまでも汚いまま。

 いつかは掃除しようと思うだけ思って蛇口を捻り、五徳に乗せたままだったヤカンにコップ一杯分くらいの水を入れ、再び五徳の上に置いて、ガスのスイッチをオンに。

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