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始まり

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始まり

燃えていた……。
 
まさに紅蓮の炎が我が身を滅ぼさんとばかりに身体を蝕む。
 
わけもわからず、どうする事もできず、ただその中で泣いていた。
 
何の因果か…我が身はその炎の中で身をていしていたのだ…。
 
運命(サダメ)に縛られるは人の運命。
 
神から降されし、裁判に逆らうは邪道の域。
 
それを知ってか、赤ん坊は炎の中から開放されたわけでもないのに泣き止み、静かに眠りに入るのであった。
 
それを一人の男がソッと肩に手を置きながら、静かに微笑む。
 
「自分の正義を貫ける立派な人間になりなさい。私のように運命から目を背けてはならないよ。それだけが私の望みだ……。」
 
赤子にそんな言葉が理解できるはずもない。ましてや産まれたばかりの赤子がそれを理解できる知識を持ち合わせていたらそれこそ驚愕の事実といえる。
 
だが、確かにその赤ん坊は、うんと頷いたのだ。
 
それに満足したのか、男は燃え盛る炎に身を委ねるように姿を消した。
 
 
 

ジリリリリ………
 
朝をさす静寂した空間に響く一筋の音。どこの家庭からも朝に一度は鳴り響く音に違いない。寝起きの頭に振動するそれは時にはストレスさえ感じる。
 
「う~ん。」
 
その鳴り響く物を止めると、カーテンから漏れる光を避けようと、再び布団に包まる。
 
人間の本能みたいなものだ。
 
「もう朝か……。」
 
ここで再び寝入る者が大半だが、この人物は違う。
 
朝に強い珍しい男であった。
 
ムクッと起き上がるとググッと身体を伸ばしていく。
 
「起きたの~ダイちゃん?」
 
「今起きた~。」
 
目を擦りながら立ち上がると、洋服箪笥(タンス)を開け、学生服を掴む。
 
その襟元につく【高】というマーク。
 
それを見つめながら鼻をこすりながら微笑む。
 
「へへっ。いよいよ俺も高校生か。今日は待ちに待った入学式だぜ。」
 
そう……新しい生活が始まるのだ。
 
地元の中学からそのまま地元の高校へと進級した。
 
特に何かを目指すってわけでもないから、その進路は妥当なはずだ。
 
少なくとも俺はそう思っている。
 
俺の名前は赤坂大輔。
 
俺が産まれると同時に、病院は炎に包まれたという不運な誕生を遂げている。そして、俺の母親も父親もその時……。
 
原因は今だ不明だが、俺以外の赤ん坊も大人も全て死んでしまったらしい。
 
普通ならば養子となるはずだったが、近所が全面的に世話をするというあまりに恵まれた環境の元、俺は父親、母親の家だった家に住んでいる。
 
「早く来ないとご飯冷めちゃうわよ~。」
 
「今行くよ智姉!!」
 
そんな俺の身の回りの世話をしてくれるのが藤浦智子(フジウラトモコ)。
 
近所のマンションに住む社会人だ。
 
昔から本当の弟のように俺の面倒を見てくれる優しい人だ。
 

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