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エース

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エース

 僕はデパートの食品売場でフロアーチーフをしていた。僕にとって接客は天職だと思っている。活気のある売場でお客さんとのやりとりをするのは何より楽しい。入社十年でフロアーチーフにもなれたし、大学のとき出会った彼女 冬海(ふゆみ)とも順調だった。そんなある日のことだった。取引先、平成製菓の営業本部長 山辺(やまのべ)さんから・・

「うちで君の手腕を発揮してみないか?」

と、お誘いを受けた。
 突然のことで驚いた。ぼくのモットーは『即決』なのだが、さすがに今回は悩んだ。

「山辺さん、一分ください!」

「いやいや、早めに応えはほしいが・・」

 一分たった。

「よろしくお願いします!」

 現在、平成製菓は表向きは好調らしいが、外資系投資ファンドの株の買い占めが水面下であったらしく、その対応により会社内部の腐敗が露呈したらしい。なぜ僕が呼ばれたか?というと、社内に実務経験者がまったくいない。ということ。みんな有名大学出のエリートばかりで、組織形体も創立五十四年という伝統にあぐらをかいて、有名タレントでCMをうてばなんでも売れる、と考えていた。しかし、実際の量販店での販売は毎年売り上げを下降させていた。大手のデパートや有名店以外は、営業らしい営業をしていなかったのだ。しかも、驚いたことに会議らしい会議をこの十年やっていないという。

 正直、待遇がよかったことが大きかったが、やりがいがある仕事だと思った。僕ももうすぐ三十歳。新しいことをはじめるにはギリギリの年令などとも感じていた。

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