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蒼月の夜

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蒼月の夜

蒼い月が夜の闇にぽつんと輝いている。
その輝きは曇る事なく…そして休むことなく…その刻を照らしていた。
半分の、蒼い月だった。

「…3時、1分か。
なぜこんな遅くまで起きてなくちゃならない…
クソ、この俺が眠れないとはな…。」
優は一人毒づいていた。いつもは12時半には就寝しているのだ、しかし。なぜか今日は寝付けない。どういう事なのか…。
「…。ベランダで風にでも当たってくるか。」
そう言って優はベランダの方へ出ていった。
「…ぉお。まだ寒ィんだな…。ったく、もう春だぜ?世の中狂ってるよ…」
などと独り言を言いながら、夜空を仰いだ。
「―――。綺麗、だな。」
蒼々とした月。
これで満月なら完璧なんだけどな、などと一人で笑っていると…
向かいの家の屋根に赤い何かが見えた。
「……なんだ?」
見たところ、人影の様にも見える。少女…いや、それは幼く見過ぎだろう。中学生くらいの女の子だ。

「おいおい…危ねぇぞ?」

向かいの家と言っても目と鼻の先である。その声は容易に相手へ届いた筈だ。

その娘の姿は、髪が赤く、その身に纏った服も赤い、という非常に特異なものであった。
少女は聞こえて居ないのか、薄く目を開けた状態で、空を見つめている。

「そこ、高いから落ちたらあぶないぞ?降りたほうが良いんじゃないか?」

優は再び少女にむかってそういった。
しかし、赤髪の少女はこちらを見ようともしない。ただ、その深い赤の瞳を、優しく閉じていた。

「…ふぅん。無視…ねぇ…。」

優は、イラついていたものの、その少女のあまりの穏やかさに、毒気を抜かれつつあった。

「…ねぇ、君。名前、なんて言うの?」

一瞬の静寂の後―

「…曖恋(あいれん)。」

あいれん。…どんな漢字か全く見当がつかない。

「素敵な…名前だね。」

優は、率直に、そう言った。そうおもったから…。
すると、曖恋はこちらを向き、その深い紅の髪をさらさらと揺らしながら…、優しい笑みを浮かべた。

「・・・。」

優は、そのあまりの可憐さに、少しの間頭が働かなかった。

「…あれ。」

気付くと、そこには少女の姿は無かった。優の頭には、あの少女の笑顔がいつまでも残っていた。そして、優はおとなしく部屋に戻っていった。
布団へ潜ると、急激に眠気が襲い、優は深い眠りへと落ちていったのだった…。

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