/ 41ページ

―prelude―

(1/2ページ)

―prelude―

丁度、十年前の話だ。
昼間は青かった空は、絵の具をこぼしたようなオレンジ色に染まっていた。
丘の上の公園は、空と共にオレンジ色に染まる町を眺められる絶景ポイントの一つでもあり、私たち四人の秘密基地でもあった。
音楽教室からの帰り、そこで遊ぶのが私たちの日課だった。

「ねぇ」

仲間の一人、仁(じん)は突然立ち止まり、悲しそうな顔をしていた。

「《ガイコク》って…遠いのかな?」
「《ガイコク》?遊園地のこと?」

当時六歳の私たちには、《外国》なんて言葉は知らなかった。
この町の外を、私たちは知らなかったのだ。

「日本とは違う国のことだよ。《アメリカ》とか《フランス》とか」
「へぇー。仁は物知りだね。でも、日本じゃないなら遠いんじゃないかな?」

正人(まさと)の言葉に仁は再び表情を曇らせた。

「おれ…その《ガイコク》に行くんだ」
『えっ!』

私も正人もクルミも、とても驚いた。

「す…すごい!」
「でも…会えなくなるんだよ?…寂しくない?」

その言葉の直後、私たちは固まってしまった。

「やだ…」

私は一言呟くと泣いてしまった。
泣けば、仁は行かないと思ったからだ。
でも、本当は何も変わらないのだ。
仁はカバンから楽譜の束を取りだし、こう言った。

「ユンナ、泣かないで…。この曲、あげる。三人で完成させて。そうしたら、帰ってくるから。絶対ね。…《約束》だよ」

/ 41ページ

―prelude―

(2/2ページ)

みんなが送ったスター数

1

この作品にスターを送ろう!

明日のスターも待ってます!
(1作品につき1日1回 押せます)

新着ピックアップ

急上昇ランキング|青春