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アマテラス

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アマテラス

「お前の体はいかにできているのか」

「わたしの体は、成り成りして、成り合わないところがひとところあります」

「わが身は、成り成りして、成り余っているところがひとところある。そこで、このわが身の成り余っているところを、お前の成り合わないところに刺しふさいで、国土を生み成そうと思う。生むこと、いかに」

「それは、とても楽しそう」





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引用:口語訳 古事記
三浦佑之 訳・注釈
《神の代の語りごと 其の一 イザナキとイザナミ 兄妹の国土創成》

1、



「お前は男神か?ツクヨミよ」


彼女の唐突な問い掛け、


「私の身は、成り成りして、成り余っているところがひとところございます。」


それに私は、父神様のお言葉を借りて応えた。
彼女は、ふん、と鼻を鳴らして
さも気に食わないといった風情で私を見下ろしている。


「その通りだよツクヨミ、
私の体は、成り成りして、成り合わないところがひとところある」


ギシリ、と彼女の腰掛けている桜の枝が軋み、枝先の淡い花弁が舞い、私の視線を霞ませる。


「スサノヲも男神だ
ところで奴はまだ“母よ”と泣いているのか?」

「そんなことを言いにわざわざ夜の国までいらしたのか?」


桜の木に背を預け、私は舞い続ける花弁の隙間から彼女を見上げる。
意地悪く吊り上がった唇に、朱塗りの盃が宛がわれ、
くっ、と彼女の喉が鳴る。


「何故父神様は、私に昼の国を御与えになったと思う?」


濡れた赤い唇が妖しく動き、まるで酔っているかの様な滔々とした声を紡ぐ。


「“母”と同じ形をしているこの私に」

「貴柱にはそのお力がある
私やスサノヲでは到底昼の国を治めるなど出来はしません
何より貴柱は我等の姉神様、父神様の第一子ではございませんか」

何が可笑しいというのだろう、
彼女は私の応えに声を上げて笑った。
実際彼女は立派に昼の国を治めている。
私や弟以上に、父神様から寵愛を受ける、
正しく、父神様の“尊き第一子”であるというのに。


「戯れ言を」


苛立ちを隠しもせず、盃を放り
そう彼女は切り捨てた。
笑いは影を潜め、
いつの間にか桜の花弁も地に伏せて、私の視界を遮るものは何もない。






「私は父神様が嫌いだ」




真っ直ぐに見つめた彼女の顔は悲しく歪み、まるで今にも泣き出しそうな幼子の様に見えた。

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