年の瀬に

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年の瀬に

母からは月に一、二回は電話で連絡がある。 基本的には、一人暮らしに不自由はないか、必要なものはないか、仕事にはなれたかと言う会話だ。 夏休みには戻らないと言ったら、少し責められた。 でも、まだ両親にも、裕子にも、会う勇気が持てなかった。 会社の人と出かける、とかなんとか言い訳した。 クリスマスは戻るようにきつく言われた。 六年生になった裕子は、ろくに学校へ行っていないと言っていた。 更には昼間、繁華街をうろついて、他校の生徒と喧嘩をしているのだと言う。 売ってるのか買っているのかまでは判らないが、元々勝気な性格はしているし、空手の腕前もあるから、どちらもあり得ると思った。 そしてあの容姿、からかい半分に絡まれる事は十分にあるだろう。 「朋弘から言ってもらえないかしら」 母に言われるが、俺が言ったところで耳を貸さないどころか、反発するのは目に見えてる。 俺がとった行動の腹いせだろうと思ったからだ。
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