鈴の章

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「大和さまは地下駐車場からの訪問でしたが、本来1階正面玄関から入ると、エントランスを始め、吹き抜けの大階段がまず目に止まります」 光はクリーム色の髪を揺らし、説明を続ける。 「さらに、大階段の先には歴代長門家当主と、現当主の肖像画が並んでいます」 現当主、長門陣は二十一代目。光はそう付け加えた。 「上を見上げれば、美しい八角のステンドガラスが設置されていますよ」 外国のホテルにあるエレベーターを感じさせる空間の中、メイドは開いた扉の先へ、大和をエスコートする。 「そして1階には催し物を行う舞台、パーティーが可能な鏡苑の大広間」 更に、美術の展示等を行う多目的ホール。 「そして、こちらが1階の大食堂です」 明るい回廊を抜けると、そこには大きな自動ドアが設置され、ガラス越しには広大な食堂が広がっていた。 「3階とお庭の説明は、また後ほど」 光が最後にそう付け加えるなか、大和は目前に広がる食堂に釘づけだった。 「ああ。しっかし、まるでフードコートだな」 屋敷の大食堂は大和が想像していた社員食堂の類と違い、ショッピングモールのフードコートを思わせる設備と賑やかさだった。  
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