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「ゴホン」
わざとらしい咳払いが、聞こえてきて、さくらは個々が職場であることを思い出した。
「…スミマセン」
困った顔をしている新田に向かって謝る。
周りを見ると、真っ赤な顔をしている人、呆れた顔をしている人、様々な反応をしていた。
新田が止めてくれなかったら、危なかった…。
創の顔を見上げる。
さくらと同じように困った顔をしていると思いきや、イタズラが成功したような笑顔を浮かべていた。
「? 創?」
さくらの手を取ると、指をしっかりと絡めて握りしめる。
「皆さん、今後とも、妻を宜しくお願いします」
勢い良く頭を下げると、さくらを引っ張って走り出した。
「創 !?」
驚いて見送るしか出来ない人の波をすり抜けて、ドアを駆け抜ける。
「あいつら、今日はすっぽかすつもりだな」
逃げ出した二人をみて、呆れたように新田が呟いた。
いつの間にか側に来ていた美樹が苦笑いを浮かべる。
「と、言うことで、二人でどうかな?」
美紀にだけ聞こえるように、ささやいた。
「ま、仕方ありませんね。行きますか♪」
せっかく開けた予定をひとりで過ごすのは味気ない。
佐倉夫妻の愚痴を酒の肴にして新田と飲むのも、悪くない。
美紀も、にっこりと微笑んだ。
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