和泉カナコ ⑥

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「なに考えてんの!!」 直後、荒川エイアが大田ユウガを思いっきりビンタした。 そのままの勢いで、彼女は大田ユウガの懐をまさぐった。 すると小さな十徳ナイフが出てきた。 大田ユウガは大きく呼吸をしてから、静かな声色で言った。 「昔から言っているだろ、エイア。僕は勝利よりも敗北に重きを置く。 ……それが僕の強みだ。 そして、これがこの勝負における僕のトラップであり、保険だ。落ちても、絶対に僕は負けない、ってね」 荒川エイアは再び彼の頬を鳴らし、そして私を指差した。 「殺すとこだったんだよ、この人を!」 「……覚悟だよ、エイア。SCMを使っていなくても、どんな勝負でも、僕はいつでも本気だ、というところを君に見せたかった」 今になって、大田ユウガの左腕からポタポタと血が垂れてきた。 「あんた、あんたは……」と言って荒川エイアは言葉を探している様子だった。 直後、大田ユウガが、ダンスでも踊るかのように荒川エイアの両手首を掴む。 けれど彼の眉間には川の字を描いたようなシワが浮かび、今までに見せたこのない厳しい剣幕を見せた。 「イカれてんのは君だろ、エイア!」  
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