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「なに考えてんの!!」
直後、荒川エイアが大田ユウガを思いっきりビンタした。
そのままの勢いで、彼女は大田ユウガの懐をまさぐった。
すると小さな十徳ナイフが出てきた。
大田ユウガは大きく呼吸をしてから、静かな声色で言った。
「昔から言っているだろ、エイア。僕は勝利よりも敗北に重きを置く。
……それが僕の強みだ。
そして、これがこの勝負における僕のトラップであり、保険だ。落ちても、絶対に僕は負けない、ってね」
荒川エイアは再び彼の頬を鳴らし、そして私を指差した。
「殺すとこだったんだよ、この人を!」
「……覚悟だよ、エイア。SCMを使っていなくても、どんな勝負でも、僕はいつでも本気だ、というところを君に見せたかった」
今になって、大田ユウガの左腕からポタポタと血が垂れてきた。
「あんた、あんたは……」と言って荒川エイアは言葉を探している様子だった。
直後、大田ユウガが、ダンスでも踊るかのように荒川エイアの両手首を掴む。
けれど彼の眉間には川の字を描いたようなシワが浮かび、今までに見せたこのない厳しい剣幕を見せた。
「イカれてんのは君だろ、エイア!」
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