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加えて、国王には多くの愛人がいた。王政における愛人の保有は、王の家系が色欲に走った家系だから、という理由ではない。
経済観念が発達しているからこそ〝保険〟という概念も発達していた。
よって、その愛人達は〝王妃のもしも〟に対応し、代わりの世継ぎを産むための存在だった。
だが、ほとんどがあわよくば王族の子を宿し、正妻の座を狙う、健康と床上手なことが取り柄の、卑しく貪欲な女だった。
そして、子のできない正妻クロウディアの噂は、愛人達にとってはこの上ない吉報だった。
とある冬の出来事。
ついに王の子を授かった者がいた。
名もなき愛人の一人だ。
その報告は王とその親族を喜ばせ、クロウディアを絶望の淵に立たせた。
その矢先、王は単身国外に赴き、クロウディアは風邪を理由に遠征を辞退した。
だが、病気は嘘だった。彼女は決心を抱き、国の墓場に赴いていた。
……邪神を崇める集会の噂を聞きつけ、彼女は石の仮面をつけて集会に参加した。
その会に入るためではない。気になる噂を聞いたのだ。
偶像である蛇の像にキスをすれば、願いが叶う、という噂だった。
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