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大和はしばらくの間、チェスのタワーを眺めた後、マジックペンで、クィーンのチェスを指差した。
「この模型もどき、触ってもいいか?」
渚は、キングのチェスを大和に向けた。
「もちろんですって。キングが帰ってくるまでの制限時間は1時間。1時間以内に、クィーンを隠した状態の正解の盤面をこの私に提示すればいいんですって」
大和はマジックでこめかみをコツコツと叩き、三段のタワー型チェス盤に置かれたルークを観察した。
はからい無しに加え、7の認識ができない、さらには相棒のメモ帳も奪われた。
大量の汗が大和のワイシャツの襟を濡らし、喉は焼けたように痛む。
立っているだけでもやっとの状態だが、緊張した鎖のような強靭な意志で、すべての集中力をまとめ上げて、目の前の狂王のチェスの光明を模索していた。
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