俺の恋人の作る料理がこんなに美味しいはずがない

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料理が下手だから別れた。それは一見すると実にくだらない理由かもしれないが、心太は下手くその域を遥かに超えているのだ。 こいつは自ら進んで料理をする。その行動自体は褒めるべきことなのだろう。世の既婚女性も見習った方がいい積極的姿勢。 それなのに心太は繊細そうな顔に見合わず、かなり手先が不器用だ。一度料理をするたびに俺の部屋のキッチンは大掃除が必要になる。それくらい汚れる。 盛り付け、下手。色合い、最悪。味覚に大爆弾を抱える心太の料理はもはや料理ではない。良くて残飯、悪くて産業廃棄物。しかしそこまではまだ許容範囲だった。 ボヤだけは本当に勘弁して欲しかった。あれほど一人で料理をするなと釘を刺したのに。 「誕生日にサプライズしようと思って」 ボヤ騒ぎだけで充分お腹いっぱい。驚愕ものだ。 値段もつけられないような超高級な肉を持ち帰ってきたときも、彼の手によって瞬く間に腐った肉塊となってしまった。しかもそれを食べさせようとしてくるのだからたちが悪い。 風邪をひいたときお粥を作ってもらったが、そのお粥を食べて食中毒になってしまった。心太はかなり心配そうにしていたが、他の誰でもないお前によって苦しめられているんだよ。 でも本当は・・・
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