1.準備ーknightー

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「気持ち悪いんだよ。 他人にベッドに寝られたら」 「……他人って…。 前は全然気にしないとか言ってたくせに。 っていうか、あんた最近私のこと嫌いだもんね」 「あーはいはい、嫌いだね」 「私は好きなのに」 「あー、それ片思いだなー」 心底不機嫌そうに棗がむくれる。 むくれてもなんでもいいから、俺は早く部屋を出てほしかった。 息苦しいんだ。 棗がいると、そばにいるだけで苦しくてたまらなくなる。 昔はこんなにひどくなかったのに、最近は加速してその気持ちが強くなってきていた。 ――片思いは、ひどく苦しいから。 「…いいじゃん、別に幼馴染なんだから。 なんか変わったわけでもあるまいし」 「……嫌だよ。 俺は徹底してんの。」 「なんで…っ!? 私、さみしいよ。 最近、快は学校では敬語だしさ!」 「しょうがないだろ! 同じ学校な以上、俺はお前らの後輩なんだから。 お前らは、俺の先輩なんだから」 「本人は気にしてないじゃん! いらないって言ってるじゃん!」 「必要なんだよ、そのくらい分かれよ。 お前は子供か…」 この討論はもう数えきれないほど行われている。 毎回平行線で、終わるのに、いつまでも棗は諦めてくれなかった。
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