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何もしてないことはない。 賀谷野君はあの時鈴木君を追ってくれた。 確かに推理面はほとんど私だったけど、何を彼はそんなに改まっているのだろうか。 「だからさ、俺と一緒に犯人について調べてくれないかな?」 全く、これが彼の正義感なのだろうか。 まあ良い、彼には恩もある。 彼がそうしたいなら私もそうするだけだ。 「10分待ってて」 「あ、ああ」 由香里は一旦家に戻った。 10分後 「お待たせ」 由香里は外出用の私服に着替えてきた。 「おう...」 女子は着替えに時間が掛かると聞くが、彼女はあまりファッションとかに時間を掛けない人らしい。 「それじゃあ、まずはどうするの?」 「そうだな、事故現場だった工事現場に行ってみないか?」 あそこか、まあ何か手掛かりが残ってるかもしれないな。 「分かった、取り敢えず向かおうよ」 二人は工事現場に向かって歩き出した。 「今日誘って大丈夫だったか?」 「休校日だし暇だもの」 どうやら由香里には問題はなかったようだ。 「それに、賀谷野君にはお礼言わなきゃならないし...」 「お礼?」 「催涙弾が投げられた時、真っ先に私を庇ってくれたじゃない?」 達也は何の事だったか思い出し、お礼を言われる事でもない気がした。 「私、あんまり涙は好きじゃないの、人を弱くする気がして...」 その時の彼女の目には悲しさすら感じ取れなかった。 唯一その時の彼女の感情を言うならば その先には何も無い、虚無感の様なものだった。 「そうか、それなら良かった」 達也はあえて尋ねなかった。 多分聞いたとしても、彼女は何も言葉を返してくれないだろう。 「あと家に来るなら連絡してくれないかな?」 アポ無しで女子の家に訪ねるのは少々不誠実な気がする。 「だって俺、お前の連絡先知らないし」 「...」 こればかりは自分が悪いかもしれない。 確かに私は友達など居ない、友達が居なければ私も他人の連絡先なんか知らないし、他人も私の連絡先なんて知らない事だろう。 「携帯寄こしなさいよ」 「え、何に使うの?」 「いいから」 達也は由香里に言われるがまま携帯電話を渡す。 すると由香里は達也の携帯を弄りだした。 「はい返す」 「おいちょっと、何したんだよ?」
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