349人が本棚に入れています
本棚に追加
/48ページ
◆◇◆
裕子は中学二年になった。
母からの電話に変化があったのは、7月だった。
裕子が部活でテニスを始めたと言う。
「テニス? なんで今更?」
部活は案の定の空手部に入っていたが、不登校だからろくに参加していないと聞いてる。
ちなみに元いた道場は、乱闘騒ぎの所為で出入り禁止になっているらしい。
なのに、テニス部?
「お友達に誘われたそうよ」
母の嬉しそうな声がした。
「友達? 愛くん、の訳ないか」
愛くんは美術部だと聞いている。今更二人でテニス部には入らないだろう。
多香子ちゃんが誘ったのだろうか。
「転校生にですって。なんだか無理矢理誘われたってぷんぷん怒ってたけど、楽しそうよ」
それは母の声の様子からも感じられた。
その時の電話では、裕子と話をして、とは言われなかった。
最初のコメントを投稿しよう!