37、その手を離さないでください。

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「そういえば同窓会があるらしいですよ」 とその話題を振ると先生は「知ってる」と間髪入れずに言った。 「でもお前、来ないだろ?」 さもそれが当然というような言葉に少々拍子抜けする。 「先生は参加ですよね?」 「まあ、だいたい参加してる。あのクラスは珍しくほとんどみんな仲がよかったからなあ」 そうなのだ。私が3年のときのクラスはみんな団結していたかのようにほぼ全員が仲良しだった。 ただし、私と一部を除く。 決して仲が悪いわけではなかったけれど、私は彼らに深入りすることはなかった。 先生は男女問わずみんなから親しまれていて、私はただ遠くでその光景を眺めているだけだった。 あの頃は手の届かなかった人が今はこんなに近くにいる。 それなのに、高校の頃を思い出すことがいまだ楽しい気分になれないのである。 「仕事があるかもしれないので、たぶん今回も難しいと思います」 そう言ってから、友人のメッセージにも同じように返事をしようと思った。
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