パピコを買いに走る

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パピコを買いに走る

 女の子とふたりでアイスをのぞきこんでいたら、女の子のスマホが鳴った。 「へー」 「どうしたの?」 「テニス部、アピール動画アップしたって。成神(なるかみ)くん、テニス部だよね。知ってた?」 「聞いてないんだけど…」 「はは。見る?」  画面を向けられたので、「ども」と頭を下げる。 「どう?」 「まあ……ブナンって感じ」 「どんなの?」  スマホの持ち方を変えて、ぼくのとなりに並ぶ。ふわりと流れてきたミントに似たにおいを、鼻がこっそり追う。 「ほんとだ。ブナンだ」  部長による部活紹介が終わって、練習風景がうつしだされたとき、耳の奥にひとつの声が飛び込んできた。 「――――あ。今の成神くんの声じゃない?」  こわい。  どうして女の子の耳っていうのは、いちばんつかまえてほしくない音を瞬時につかまえるんだろう。
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