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第三章 加藤良三
数日間の捜査も空しく、被害者の身元は割れなかった。
しかし、7月22日になって、一つの捜索願が練馬警察署に出された。
捜索対象は加藤良三、練馬区の資産家であった。年齢は62歳、身長168cm、血液型はB型の男性で7月12日の昼から家に戻らないとの捜索願が出されていた。
加藤は7月12日もしくは13日に失踪したものと考えられた。というのも15日に家政婦が出勤してきて主人の不在を知ったのである。
門倉と早見は23日に練馬の加藤宅に出向いた。
加藤の自宅は練馬の豊玉陸橋の近くにあり、かなり広い敷地に建っていた。この日は朝から強烈な太陽が照りつけ、かなり暑かった。二人は10時過ぎに加藤宅に到着した。
早見は家を見て、「成金趣味の家だな」と思った。一見、お城のような外観の大きな家である。
チャイムを鳴らすと中から、初老の女性が出てきた。家のけばけばしさとは似つかない質素な老人である。
「加藤良三さんのお宅で宜しいですか。」
門倉が丁寧に聞いた。
「はい、そうです。何か」
「警察の者ですが、捜索願を出されていますね。その事でお話を伺いに来ました。」
二人は警察手帳を出して見せた。
「少しお待ち下さい。」
そう言って、老女は一度中に引き下がった。すぐに再び、出てきて、
「どうぞ。」
と言って、中に二人を招き入れた。
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