春の魔法

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(小牧が、近い…) こんな近いのって初めてだった。 さっきもドキドキしてたけど、今、猛烈にドキドキしてる。 放課後、今、このまま時間が止まればいいのにって、真剣に思った。 手のひらがくっついている以外、動けるようになった指を小牧は動かして、ふいに私の手をギュっと握った。 「あんっ…」 ドキドキしてたせいで、思わず変な声が出てしまう。 一瞬で、顔面から火が出そうに赤面してしまった。 それは小牧も同じだった。 「わりっ、田原っ!」 それに反応して、反射的に慌てて小牧が手を引っ込める。 「ああっ!」 結構な勢いで私は急に引っ張られて、思わずイスから前のめりにコケてしまう。 「田原っ…!」 コケる私をかばおうとして、小牧が手を伸ばしたのか引っ込めたのか、分からないけれど、2人で不自然な体勢でイスから転がり落ちた。 窓際にいたから、壁によりかかるみたいな姿勢で床に尻もちをついた。 小牧は私に引っ張られて、今、猛烈に近い。 「………」 「…………」 言葉に詰まる。 近すぎて、胸が苦しい。 それに、この体勢は…。 「これって、壁ドンってやつ?」 小牧が真顔で言うから、こっちも返答に困る。 こんなベタベタなシチュエーションで、とってつけたみたいにドキドキしてる自分が悲しい。 恥ずかしすぎて、彼の顔が見れない。 「田原」 「……」 顔を上げた時、キスされた。
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