悠の家に電話を入れさせ、外泊の許可を取らせた。 　やや手間取ったが、今日が金曜で明日と明後日が休みというのがよかった。 　ただ、電話の悠、ヤバかった。 「お母さん、あのね、今日、お友達の家、泊ってもいい？」 　小学生か？　という声と表情。 　高３男子が母親のこと『お母さん』と呼ぶのもどうかと思う。 　でも、似合ってた。 　どうして今までαだと思われてたのかというレベル。 　他のΩより、ずっと可愛い……。 　要領を得ない感じだったから、俺が代わって説明した。 　悠はスポーツ万能だし成績も優秀だけど、特徴はΩだった。 　成績は不正していたのかもしれない。 　αが親の家庭には若干ある。 　手を回せるところに回して、子供のクラスを少しでも上にしようとする。 　βをαに誤魔化す親もいるにはいる。 　αも本当は２割もいないんじゃないかと言われている。 　検査が義務化されていないのも、怪しいと言えば怪しい。 　だから、ツガイがいるということは、本物のαだという証明になる。 　でも、悠がスポーツ万能なのは、俺も確認している。 　短距離走は速いし、ちょこまか動き回るし、運動神経は抜群だ。 　学力は誤魔化すことができるが、体育は誤魔化せない。 　綺麗な動きをして、キレもいい。 　頭だって悪くないんだよ。 　授業で当てられても、ちゃんと答えてるし。 　でも、どう見てもΩだ。 　今だって、明らかに発情してる。 　フェロモン、出てるし……。 　これで悠がαだったら、俺が変態の領域に入る。 　α男子に興奮してることになるんだ……。 　それとも、俺がホントはΩで、だからαの悠に興奮してるのか？ 　……そんなはずはない。 　発情しているのは悠だ。 　フェロモン出てるのは、悠なんだ。 　発情期は一週間ほどあるから、月曜になれば、悠は学校に行かなければならない。 　この状態の悠を学校に行かせられるのか？ 　俺ならいつも通りに行けるが、悠はムリだ。 　αだらけの教室に、この状態の悠……。 　フリーのΩのフェロモンは、誰でもその気にさせられる。 　特にフリーのαはΩが最も狙うべき相手なので、一番反応するようにできている。 　我慢はできるが、それだって限界がある。 　うちのクラスには、フリーのαしかいないはずだ。 　授業どころではなくなる……。