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「…円ちゃん」
「ん?」
立ち止まって、円の方を向く龍也。
「笑いなさーい」
傘を首で支えて、両手で円のほっぺをたまむ。
「りゅ、りゅー、くん?」
「…ぷはっ、円ちゃん変な顔ー」
「もうっ、ふふっ」
龍也のおかげで少し吹っ切れた。そのあとはいつものようにふたりで話しながら帰ることができた。
「りゅうくん、ありがとね」
「ん?」
「なんでもない」
えー、何教えてよなんて笑う龍也。
「…あ、」
円の家の近所の公園。そこに立っている立花の姿。
「円先輩っ!」
泣きそうな顔で近づいてくる立花、でも龍也が円の前に立った。
「今更何のようなの」
今までとは違って冷たく吐き捨てる龍也。
「っ、円先輩たちきっと勘違いしてると思ってっ、新太先輩は悪くないんです」
「悪いけど、今は帰ってもらってもいい?」
「でもっ、あれは全部私が悪いんです」
道路の真ん中では目立つと、公園のベンチに移動した。ここは屋根がついているため、傘をたたんだ。
「で?」
円と立花の間に座った龍也が言う。
「…あのとき、新太先輩すごく落ち込んで、少し自棄になっているようでした。それで、きっと誰でも良かったんだと思います。気付いたら新太先輩にキスされてて、避けられなかった私が悪いです」
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