第13章 サムシング・ブルー

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 仕方なく、一つ開いていたはきだし窓から、中を覗き込むと、フロアの真ん中に見慣れないものが立っている。  一瞬人が立っているのかと見間違えて私はビクッとした。  しかし、それは人ではなくウエディングドレスだった。 かえでさんが明日着るドレスだろう。 (すごい、綺麗)  初めて見る本物のドレスの美しさに、私の目は釘付けになった。  その魅力に引き寄せられるように、ふらふらと入室し、 ドレスを自分の体に当ててみようとしたが、背丈が足りず、うまく出来ない。  仕方なく作業用の椅子を持ってきて、その上に乗り、ドレスの後ろから顔を出して鏡を見ようとした時、 バランスを崩し、ドレススタンドと共に後ろにひっくり返った。 (痛た……)  私は強く打ち付けた腰をさすった。 (まずい)  きっと派手な音がしたのだろう、人がやってくる気配を感じた。  不法侵入した上に、大事なドレスにいたずらするなんて、 さすがのシンさんも許してはくれないだろう。 (とりあえずこの場を離れないと……)  急いでドレスを起こすと、何か小さな物が下に落ちて、部屋の隅に転がっていった。 拾って掌にのせて見ると、それは小さな青い薔薇のブローチだった。  ドレスのどこについていたのか検討がつかない。  そうしている間にも、誰かが入室してきそうで気が気でなかった。  私はそれを握ったまま逃走した。
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