ヨン。

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「お前さ、もっかい酔えば」 「えっ!? どーゆー指令ですかそれは」 「ん? もっかい素になんねーかなと思って」 「はぁ……」 それは。 今度こそ、やばい気がするんですが。 「私、木嶋さんに対してはそんなにシャッター降りてませんけど」 ほぼほぼ素です、普段も。 弱いとこや甘えたとこは、そうそう見せたくないだけで。 「んー、もうちょいね、もうちょい」 「なんですか、もうちょいって」 言いながら。 追加注文を入れた焼き物は、なかなか出てこなくて。 お酒だけが進んでしまって、なんだか木嶋さんの思うツボのような。 「八年、かあ」 呟いたのは木嶋さんだ。 同じことを、私も考えていた。 八年。 待たずに次に走ったら、私は薄情なんだろうか。 ――次って何? あんなに、ふとした瞬間に泣くほど気ぃ張ってんのに。 気ぃ張ってないと駄目なのに。 一人で大丈夫にならないと、駄目なのに。 こんなに、まだ私の八年は、全然過去になんかなってないのに。 「別に、大丈夫だし」 「あーそう。そーだよな。お前はそういうヤツだよ」 「うん。そーゆーヤツ」 でも今は。 ただ、今は。 「冬だから、かな」 「……寒い?」 「湯たんぽくらいは欲しい、かな」 「それ、男にとっては結構鬼畜な」 「別に、木嶋さんに頼んでないし」 「あれ、そーなの? 選んで俺だったんじゃなかったっけ」 「うっかり俺がそこにいたからですよ」 頼んだら、困るクセに。 恋するオッサンが、よくも。 「八年、ねー。五十四か」 「――え?」
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