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相変わらずどんと胸を張って堂々と俺の前に現れるこの女には、遠慮という概念は備わっていないのだろう。少なくとも俺に対しては。
「さあ、今日も行くわよ。」
白河が天井を指さして口を開く。
「…どこに?」
「決まってるじゃない、屋上よ屋上。まさか昨日あなたが言ったことを忘れたとは言わせないわよ。」
あなたが言ったこと。それはすなわち弁当の件だろう。
「いや、だからあれは冗談だって…。」
そこまで言いかけて俺は口を噤んだ。彼女が手に提げている手提げ袋はどう見ても昨日見たそれよりも大きいものだったからだ。それが厚意なのかどうかはまだ計り知れないが、わざわざ作ってきてくれたのを無下にすることもないだろう。
「優奈は、来るのか?」
俺の問いに、彼女は若干表情を曇らせる。
「来ないわ。当然声をかけたけどね。今日はあの連中と一緒に食べるそうよ。」
しかし、口調ははっきりしている。自分の心境を隠そうとしているのか、もともとこういう話し方なのかはわからないが、それでもやはりまだ優奈のことを気にしているようには見えた。
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