09)過去との決別

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黙ったままの私の手を引き、響さんはメモリーに戻る。 緑の気に迎えられると、内なる苛立ちがゆっくり消えていく。 ドアベルの余韻が消える間もなく、響さんは私を強く抱き締める。 「君を不安にさせているのは何?」 私の髪に顔を埋め、悲し気に囁く。 「こんなに近くにいるのに、君を遠くに感じる。胸が苦しくて仕方がない」 苦しいのは私も同じだ。 「……これが恋愛の第一段階ではないのでしょうか?」 相手の心が分からず思い悩む、恋とはそういうものだろう。 「不安や苛立ちが? この苦しさが? 恋愛中の世界はピンクと相場は決まっているだろ?」 少し背中を逸らし、響さんの顔を見る。
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