第1章 序節 招待状  唯

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「石田さん 宇野さん 江口さん――」 名前を呼ばれ、次々にスマホを手に取るクラスメイト。 私は席に戻ってすぐ、電源を入れた。何気なくアドレス帳を開くと……。 「ぇ!? これって」 すかさず、担任が補足を付け加える。 「気付いた人もいると思うけど、学年みんなの連絡先が登録してありまーす」 そう。 全校生徒の携帯は、“番号交換=友達”という通例の垣根がすでに取り払われていた。 「皆が聖光学園という輪の中の1人であって、決して孤独ではない。そういう自覚とゆとりを持って、これから色んなことを一緒に学んでいきましょう!」 さすがに動揺を隠せない生徒たち。 事前に保護者には説明されていたのか、牙を剥くモンスターは現れなかった。 その時、 ──ピリリリリッ♪ 「ん? もう鳴るなんて人気者ですね」 「「ハハハハッ――」」 「‥‥す、すみません!」 私の携帯からけたたましい着信音が流れ、慌てて音を消す操作をした。 「このように、授業中は電源を切っておくように!」 「「ハハハハッ──」」 またも嘲笑の的。かつ、とんだ晒し者。 耳が熱くなっていくのを感じながら、引き出しの下に携帯を隠し、送られてきたメールを開く。 「ゆうくん?」 彼からのショートメール。 一瞬、胸が踊った。 の、だが──。  
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