さみしんぼ

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さみしんぼ

 ねぇ、知ってる?さみしんぼな女子生徒の話。  あ、やぁ。この間はありがとう。ばらまいちゃった小銭拾うの手伝ってくれて。  図書室?違う?本持ってたから、つい。行き帰りのどっちかかなって。あ。そうなんだ。いいよねー。放課後の学校って。私も好き。  私?私はねー、友達待ってんの。先生に呼び出されちゃって。すぐ終わらせるって言ってたけど、多分無理だね。時間かかるよ、あれは。だからここで一人さみしくお留守番。戻ってこなかったらどうしようって、ちょっとドキドキしてる。  でも、ま、天気いいし、吹奏楽部から漏れ聞こえる音楽聞きながら、のんびり日向ぼっこでもしてようかなって。好きなんだよね。この中庭。難点は寝ちゃわないかってとこだけど。前に一回このベンチで寝ちゃってたことあってさー。うん。大丈夫。風邪はひかずにすんだよ。  え?話し相手になってくれんの?わー。ありがとう。嬉しいー。  その本。怖いやつだよね。怖い話好きなの?え?そういうわけじゃない?参考に?なーに?もうすぐ夏休みだし、肝試しでもするの?  いや、まぁ、確かにその前に試験だけれどもさ。うん。余裕って程ではないけど、今のとこどうにかはなりそう。もしかして、怪談よりも試験の方が怖いタイプ?  ははっ。違うって否定しきれないんだ。  あ。そうだ。怪談と言えばさ、ねぇ、知ってる?さみしんぼな女子生徒の話。  昔ね、病弱な女子生徒がいたんだって。休んでばっかだから、友達いなくて。せめて楽しそうな人たちを見ていたくて、登校できた日は無理して遅くまで残ってたの。  でもね、その子、卒業前に亡くなっちゃって。学校がよっぽど好きだったんだね、死んでからも時々、校内で姿が目撃されてるんだ。  たまに、そうと知らずその子に話しかける人もいて。仲良くなって気に入られると、どこか別の次元に連れていかれちゃうの。  その子がよくいたのがこの中庭で。だから、姿を表すのはこの場所が多いんだって。  ねぇ、どうする?私がそうだったら。
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