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悲しみは癒えないままだが…聖子は退院を迎える…
包帯はとれたが…大きな瞳に光りはない…
それでも聖子は元気な笑顔を見せていた…
久しぶりの我が家に足を踏み入れる…
「痛い!」
段差につまずき転ぶ聖子!
「大丈夫か?」
慌てて抱き起こそうとする…
「大丈夫…一人で起きる…聖子のお家だもん!歩けるよ!」
廊下を手で確認しながら健気に歩く娘…
「パパ……わかっていたけど…ママいないんだね…ママの匂いはするのに…やっぱりママ居なくなっちゃったんだね……」
前向きに涙を見せなかった聖子が母親のエプロンをにぎりしめ泣く…
「ママ~………」
本当は誰よりも泣きたかったのは聖子のはずなのに…
父は自分が情けなかった…妻を亡くし娘が失明して…なんて不幸なんだと…運命を呪った…しかし…娘は、最愛の母親を亡くし光りを失った事で…これからいくつもの困難がまっているのだ…
「我慢させたんだね…パパが泣いてばかりいたから…ごめんな聖子…」
父は娘を抱きしめた…
「パパ………」
小さな手で抱き着き泣きじゃくる聖子…
飾られた写真のなかの母…聖美は優しく微笑んでいた…
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