回想技師と人質噺家

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「こんなガラクタで、ランプ先生の作ったマイロイドクラッキング出来ると思ってたんか?ふざけ倒せド素人が。」 すぐりは頭の仰々しい装置をかなぐり捨て、黒いスーツと白いシャツに包まれた女性の胸ぐらを掴んだ。 そして頬を押さえ呆然とする女性の、整った顔にぐいと引き寄せる。 「てめー様がポンコツ呼ばわりした私らマイロイドはさ、こー見えて結構ガード堅ぇんだわ。」 いつもの悪態とは違う口の悪さと怒りようを顕わにするすぐりに驚き、怯える洋助を尻目に、すぐりは続ける。 マイロイドの生みの親にして、すぐりが最も敬愛する研究者、Dr.ランプ。 彼女の作品にして、娘であるマイロイド。 それを足元に転がる見かけばかり立派な機械らしきもので壊しに、あるいは操りに掛かろうとしたこの女性が、すぐりはどうしても許せなかった。 「とくに、比較的新しいエコロイドシリーズの私なら尚更ガードも堅ぇし、私自身でも少しずつ新しいブロックシステム組み込んでんだわ。 まだまだランプ先生には遠く及ばねーけどさ。」 エコロイドシリーズ。 廃棄されたマイロイドのパーツ、そして使い古しの携帯電話などから作られた、いわばリサイクルマイロイド。 その初号機、ECO-01こそすぐりであり、すぐりの独特の訛りめいた言葉使いも、エコロイドたる証であった。 「それをこんな、猿でも豚でも作れるガラクタが破れると思ったんか?あぁ?わざわざ人様拉致って、財布とっちらかしてまでさ。 ランプ先生ナメんな。」 もしもすぐりが人間であったならば、目の前の女性の端正な顔に、軽蔑を込めて唾を吐いただろう。 しかし機械であるすぐりの体は、吐き捨てる唾を持ち合わせていない。 生まれて初めてマイロイドとして生まれたことを恨みつつ、すぐりは女性を椅子に突き返した。
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