細流の道 弐

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スパァッと、美味そうに煙管を吸い紫煙を立ち昇らせた。 『だが暫くは山崎もまだこちらで動け。島田と共にな』 「は」 『その後は大坂で例の商人共に言い含めて来い。会津に金を貸せとな。大坂はお前の地元だ。何かと話も弾むだろうさ』 鼻で笑い、また一服。 『…合わせて物価の動向も暫く見とけ。恐らく…下がる筈だ』 「御意のままに」 神妙な顔でスッと、頭を下げた山崎に頷く。 『島田』 「は」 『聞いての通りだ。以上』 「ええッ!?もっと何かこう…」 大音声に心底鬱陶しそうに顔をしかめたのは一瞬で。 無表情に視線を向けた。 『宮部を見つけ出せ。監察全員を使い何としても潜伏先を突き止めろ。過激化する前に』 「は」 『…桂、久坂、そして…吉田。コイツらの動向もだ。長州に逃れた宮部と必ず蔓んでやがる筈…芋蔓式に引っこ抜いてやれ』 カンッと強く響く煙管の音に、島田は土方の思いを汲んだ。 「御意。必ずや」 その返事に微かに表情を緩めたが、雙眸は力強いまま頷く。 「一兎二兎と言わず、三兎四兎と追う訳かぁ。[二兎を追う者は一兎をも得ず]って言うけど」 『大馬鹿野郎』 土方はクツリと喉を鳴らした。 『俺達ゃ…過激派の尊攘志士の間じゃ通ってる名が、狗だぜ?狗は鼻が効くってのを、忘れて貰っちゃ困る…だろ?』 鼻でせせら笑う姿は… この上無く、不遜。
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