第3曲 ノクターン嬰ハ短調第20番は切ないです

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バーテンダーは僕が注文したカフェオレを警告するように乱暴に置き、威圧するような一瞥を僕によこした。憤りを感じさせる静かな足音を立てて、仏頂面でカウンターに戻る。 しかし、そんなバーテンダーなどまったく意に留めず、恋音ちゃんは僕のところにやってくる。もしかして、鈍いのかな? 「何か進展があったんじゃないですか?」 鈍くなかった。いきなり核心を突かれ、僕は驚いて恋音ちゃんをまじまじと見る。 「え、なんでわかるの?」 「丸わかりですよ~」と恋音ちゃんはおかしそうに笑う。「だって、嬉しそうな顔してるから」 そんなにわかりやすい顔してるのかと僕は恥ずかしくなった。鏡とかあったら確かめたい。 「それでどうなったんですか?」 恋音ちゃんは興味津々でぐいぐいこられて、僕はたじたじになる。それでも、今の幸せを共有したくて、僕は恋音ちゃんにCDの貸し借りの話をする。 「すごいじゃないですか! 大進展です!」 恋音ちゃんはまるで自分のことのように大袈裟に喜ぶ。 「僕もこんなことになって最初は気分がふわふわして夢なんじゃないかと思ったくらいだよ」 恋音ちゃんは僕の気持ちにうんうんと頷く。「素敵です。じゃあ、今度は二人でデートに行こうって誘うんですか?」 えっと、と僕は返答に困る。「うーん、まだ早い気がする……」 「いえ、遊びに誘うだけですから、そんな気負うものでもないと思いますよ!」 恋音ちゃんはガッツポーズして、誘いましょうと言わんばかりに目を輝かして言う。バーテンダーと同じこと言うんだな。 僕は渋い顔をした。もし断られたらどうしようと思って、どうにも誘う気になれないのだ。 「難しそうなら」と恋音ちゃんは僕の気持ちを察したのか付け加えるように言った。「また、マサルくんも加えた3人で行けばいいと思います!」 カウンターの方からガンッというシンクに物が落ちた音が鳴った。恋音ちゃんはいいよね? と助けを求める目をバーテンダーに向けて、バーテンダーは反論したそうに半端に開けた口からただ諦めたため息を漏らした。 それを見て恋音ちゃんは嬉しそうにこちらを見て言う。 「マサルくんも協力してくれるみたいだから、遊びに誘ってみましょう!」 僕はこのときにおいてはバーテンダーに少し同情した。僕もこうなっては嫌だとは言えず、恋音ちゃんの提案を受け入れることにした。
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