ルール その44

25/33
13188人が本棚に入れています
本棚に追加
/2020ページ
「どうしたんだ?晴海」  隣から鈴原が不思議そうに声をかけるが、耳に届いていないようだ。  ふと目をあげれば、車の傍に立った智晴が、応援するかのように顔の前でぐっと拳を握り締めている。 「お、お前がっ」  路面を睨みながら、晴海がやたら腹に力を入れた調子で言った。  「おまえがっ、彬と付き合ってるのは知ってる!」 「えええ!?」  鈴原が声をひっくり返らせて仰け反った。 「あ、あの、はるみっ、それは……っ」  真っ赤になってあわあわし始めたが、晴海はやっぱり目に入っていないらしい。 「智晴に聞いた時はびっくりして、正直ちっとムカついた。けど、だけど、それはお前が嫌いってわけじゃなくて、つ、つまり、お、俺はっ、俺は……っ」  路面に向かって叫ぶように言う途中で、声を詰まらせる。  伏せられた晴海の頭を眺める宮坂の視界の端で、車の傍に立つ智晴の口元が、言えッ、と動いているのが見て取れた。
/2020ページ

最初のコメントを投稿しよう!