最終話 夢の終わり

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だいぶ呂律がまわらなくなってきたものの、私たちはお互いの時を取り戻すように別れた後の話をした。どうやら光一も今はパートナーがいないらしくて。シングルってことらしい。 何人かとつきあったけどしっくりいかなかったみたい。 それは私も同じだった。光一と別れてから結婚なんてしたくないって。だって、好きな人が去ってしまうなんてつらすぎて耐えられない。そんな想いもうしたくなかったから。 私とつきあってたときに二股してた女の子はどうしたのよ? 酔った勢いにまかせていじわるな質問もした。 「それは、あのあとすぐ終わったよ」 光一はビールの入ったグラスを見つめたままこたえた。 私たちって。なんだかんだ似たようなパートナー運だったのかもね。 時間はあっという間に過ぎた。お店が閉店ということになってようやく私たちも話を終えた。 勘定をすませて外に出ると空気がひんやりしていて気持ちよかった。 この後どうしようか? 今日はしこたま飲んじゃったし。もう次のお店にいく元気はないよ。 「じゃあまた」 そんな言葉を言ってしまうと、ここで別れてしまうのが嘘みたいにさみしく感じた。 なんだかこのまま帰りたくない。 もっと光一と一緒にいたかった。 私の気持ちを察したのか、バサバサの前髪をがしっとかきあげて光一が言った。 「俺たち結婚しないかな?」 「え?」 「だから鈴花。僕と結婚してくれないかな?」 なにを? 突然いってるの? でも、それって、うれしいオファーかも。 なんて頭の中がぐるぐるとまわって目が回って、私の意識は薄れていった。世界がぐにゃりとゆがんで、私は崩れるようにたおれながら光一があわてて私を抱きとめようとしてくれているのが、うっすら薄目でみえた。 fin
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